ホームシネマに理想的なサウンドシステムは、リスニングエリア全体にわたってフラットで均一な音響応答を確保する必要があります。この目標を達成するための主な課題は、非常に低い周波数(100Hz程度以下)の音場をコントロールすることにあります。この周波数の音場は、部屋のモーダルな挙動によって強く支配され、モーダルの最大値と最小値によりリスニングエリア全体の音圧間に大きな差が生じます。さらに、これらのルームモードの多くの販社と長い減衰時間により、他の方法では体験して楽しめるはずのダイナミクスやディテールの多くが不明瞭になってしまいます。
1. はじめに
従来のパッシブのソリューションでは、低周波数で効果を発揮するために大量の吸音が必要であるため設置面積が大きくなり、材料費だけでなく不動産も高価になります。ベーストラップなどの他のアプローチは、通常は特定の周波数でのみ効果があり、広帯域ソリューションとしては非現実的です。そのため、低周波に対する従来のパッシブ音響処理だけではホームシネマには不十分です。
この現実に対応するため、多くのホームシアターの専門家はパッシブ処理に加えて複数のサブウーファーを配置させています。これには様々な取り決めが存在しますが、モードを分割することを目的としています。Trinnov社の研究では、いくつかのアプローチは確かにルームモードの影響を軽減できるものの根本原因(波の干渉)には対処していないため、問題全体を解決するわけではなく、望ましくない副作用が発生することがわかりました。
例外はDouble Bass Array(DBA)方式です。従来のDBAアプローチは、その名が示すようにサブウーファーの2つのアレイを使用します。1つは前壁のエミッタアレイ、もう1つは後壁のアブゾーブ(吸収)アレイです。エミッタアレイは平面波を生成し、室内の側壁,天井,床の反射による干渉の量を低減します。次に、アブゾーブアレイは同じ信号で背面の壁の反射を打ち消そうとしますが、音が部屋の全長に伝わるのにかかる時間だけ反転され、遅延します。
ただし、このアプローチで良好な結果が得られるのは理想的な条件下でのみであり、実際に達成することは困難です。多くの場合、壁は良好な平面波を生成するのに十分な反射率を持っていません。また、後壁に到達する波は、波を適切に導くのに壁の硬さが不十分または平行であるため、部屋の長さを伝わって行く間に変化します。最後に、波の性質は、家具,蹴込み板,階段状の座席により、後壁に到達する波は前壁から出た波と同じではなくなり、効果的に打ち消すことができなくなります。不一致が生じると、所定の周波数を外れた不要な波のエネルギーが室内に起こります。
Trinnov社のWaveForming™は、既存のソリューションの限界を克服し、超低周波の音場を制御するためのより効果的で多用途なツールを提供します。WaveFormingの重要な側面と、このテクノロジーを最大限に活用するためのガイドラインと推奨事項を以下に示します。
WaveFormingは強力かつ柔軟なツールです。ただし、信号処理の高度化に関係なく、物理の法則は依然として存在します。
具体的には、特定の部屋に推奨されるサブウーファーの数を決定する要因が2つあります。
1. 前壁と後壁のサイズ
当然のことながら、大きな部屋には小さな部屋よりも多くのサブウーファーが必要になります。
2. 制御したい最高周波数
周波数が高くなると波長が短くなるため、平面波形成の制御を維持するにはサブウーファーの間隔を狭くする必要があります。
この文書では、波形形成のパフォーマンスを最大化するためのサブウーファーの数とその推奨配置について説明しています。使用するサブウーファーのタイプに関する推奨事項や、各サブウーファーの推奨技術仕様は含みません。この文書には、各サブウーファーの能力に基づいてWaveForming™システムの音圧レベルを計算する手段も含まれていません。これらの推奨事項は、後日別の実装文書として提供する予定です。
この段階での最良の推奨事項は次のとおりです。
● 各アレイ内で同じサブウーファーを使用する。
● フロントアレイとリアアレイの両方に同じ帯域幅のサブウーファーを使用する。
● リアアレイは、フロントサブウーファーよりも電力処理能力が低いサブウーファーで構成される場合がある。
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